はじめに
秋から冬にかけて、朝晩の冷え込みが厳しくなる季節。
人間と同じように、犬もこの気温差に体が追いつかず、体調を崩すことがあります。
「最近なんだか元気がない」「ごはんを残す」「くしゃみが増えた」。そんな小さな変化が、実は“季節の変わり目によるストレス”のサインかもしれません。
特に、小型犬・シニア犬・短毛種・持病がある犬は、気温差や乾燥の影響を受けやすく、健康管理に注意が必要です。
この記事では、秋冬に犬が体調を崩しやすい理由と、季節に合わせた食事・環境・ケアの工夫をわかりやすく解説します。
大切な愛犬が寒い季節も快適に、そして健康に過ごせるよう、日々の暮らしのヒントを一緒に見つけていきましょう。
秋冬は犬が体調を崩しやすい季節
秋から冬への移り変わりは、人にとっても犬にとっても変化の季節。
気温・湿度・日照時間・活動量など、環境のすべてが少しずつ変わります。
朝晩の冷え込みが激しくなる
日中はポカポカしていても、朝晩は一気に気温が下がる季節。
この寒暖差が犬の体温調節を難しくし、免疫力を下げてしまう原因になります。
犬は人間よりも体温調節が苦手で、特に小型犬や短毛種は体に熱をためにくいため、朝晩の急な冷え込みで「下痢」「くしゃみ」「咳」「食欲不振」などの不調が出やすくなります。
湿度が下がり乾燥が進む
秋冬は空気が乾燥し、室内でも湿度が40%以下になることが多くなります。
この乾燥が、犬の皮膚や被毛にも大きな影響を与えます。
- フケが出やすくなる
- 皮膚がかゆくなる
- 静電気が起きて毛が絡む
- 鼻や喉が乾燥して咳が出る
特に暖房を使う室内では、加湿ケアが重要になります。
日照時間の減少と自律神経の乱れ
秋から冬にかけて日照時間が短くなると、犬も活動量が減り、ホルモンバランスや自律神経のリズムが乱れがちになります。
これは、人間の冬季うつに似た現象で、「なんとなく元気がない」「寝てばかりいる」といったサインが出ることもあります。
運動量の低下
寒さや日照時間の短さから、散歩時間が減る犬も増えます。
その結果、筋肉量が落ち、代謝が低下し、体温を保ちにくくなります。
また、運動不足はストレスにもつながり、免疫力の低下を招きます。
栄養バランスの乱れ
夏場に比べて食欲が増える一方で、消費エネルギーが減るため、秋冬は肥満リスクが高まります。
また、乾燥で皮膚トラブルが起こりやすくなるため、脂質・ビタミン・ミネラルをバランス良く摂取できる食事が大切になります。
犬種・年齢別に見る秋冬の注意点
秋冬の健康管理は、犬種や年齢によっても気をつけるポイントが異なります。
小型犬
チワワ・トイプードル・マルチーズなどの小型犬は、体が小さいため体温が下がりやすく、寒さにとても敏感です。
体が冷えると、消化機能が落ちて下痢をしやすくなるほか、関節や筋肉もこわばりやすくなります。
対策
- 室内は20〜23℃前後をキープ
- 寝床には毛布やペット用ヒーターを使用
- 散歩は暖かい時間帯に
中型犬・大型犬
柴犬やゴールデンレトリバーなどの中・大型犬は、体温維持能力は高いものの、乾燥や老化による関節トラブルが出やすい季節です。
対策
- 乾燥対策に保湿スプレーを併用
- 高齢犬はフローリング対策(滑り止めマット)
- 朝晩の寒さ対策を強化(服・ブランケットなど)
シニア犬
加齢によって代謝・免疫力・体温調整力が落ちているため、秋冬の環境変化はシニア犬にとって大きなストレスになります。
対策
- ごはんを人肌程度に温めて消化を助ける
- 寝床の位置は冷気の通り道を避ける
- 定期的に体調チェック(便・尿・食欲・歩き方など)
子犬
まだ体温調整が未発達な子犬は、寒さに非常に弱く、一晩の冷え込みでも体調を崩すことがあります。
対策
- ケージの下にペットヒーターや湯たんぽを設置
- 直風や直射日光を避ける位置にベッドを置く
- 食事回数を減らさず、エネルギーをしっかり摂取
短毛種(イタリアングレーハウンド、ミニピンなど)
被毛が薄く皮下脂肪が少ない犬は、冷気が直接体に伝わりやすいです。
洋服や毛布で体を包み、温度差から守る工夫が欠かせません。
ダブルコート(柴犬・ポメラニアンなど)
アンダーコートを持つ犬は、抜け毛と静電気が増える季節。
ブラッシングで通気性を保ち、乾燥予防を兼ねましょう。
秋冬の犬の健康管理で気をつけたいポイント
秋冬は、気温差・乾燥・日照時間の変化が重なり、犬の体調を崩す要因が増える季節。
ここでは、日常生活の中で意識しておきたい健康管理のポイントを見ていきましょう。
体温管理を最優先に
犬の平熱はおよそ 38〜39℃ と人間よりも高め。
それでも寒暖差が激しくなる秋冬は、体温維持にエネルギーを多く消費します。
室内の適温を保つ
犬にとって快適な室温は 20〜23℃前後。
ただし、犬種・年齢・毛量によって差があります。
- 小型犬や短毛種:22〜24℃
- 大型犬や長毛種:18〜22℃
- シニア犬や子犬:24〜26℃
暖房を使う際は、風が直接当たらないように注意し、
部屋全体が穏やかに暖まるようにしましょう。
寝床の温度調整も忘れずに
冷たい床からの冷気は、体をじわじわ冷やします。
ペット用ヒーターや湯たんぽをタオルで包み、温かい寝床を作ってあげましょう。
また、電気ヒーターを使用する場合は 低温やけど に注意。
温度を上げすぎず、犬が自由に移動できるようスペースを確保します。
水分補給を怠らない
秋冬は汗をかきにくく、喉の渇きを感じにくいため、水分摂取量が減少しがちです。
しかし、暖房による乾燥や代謝の低下で 脱水症状 になるケースもあります。
水分摂取を促す工夫
- ドライフードにぬるま湯をかける
- ウェットフードやスープを取り入れる
- 常に新鮮な水を複数の場所に置く
- 器を陶器やステンレス製にして清潔を保つ
体の水分バランスが整うと、皮膚の乾燥や老廃物の排出もスムーズになります。
空気の乾燥と静電気対策
秋冬の乾燥した空気は、犬の皮膚にも負担をかけます。
また、静電気によるストレスや被毛ダメージも無視できません。
加湿で環境を整える
室内の湿度は 40〜60% が理想です。
加湿器を設置するほか、濡れタオルを干したり、観葉植物を置くのも効果的。
静電気防止
- ブラッシング時に保湿ミストを使用
- 綿や麻などの天然素材の洋服を選ぶ
- 合成繊維のベッドカバーは避ける
皮膚の乾燥を防ぐことで、かゆみやフケの発生を抑えられます。
秋冬の食事管理と栄養の見直し
寒くなると犬も体温を保つためにエネルギーを多く使います。
しかし、運動量が減ることで消費カロリーが落ち、「太りやすく・痩せにくい」季節でもあります。
カロリーと栄養バランスの調整
ポイント
- 活動量が減る犬:フード量を10〜15%減らす
- 外で過ごす犬:寒さ対策にカロリーをやや増やす
- シニア犬:高タンパク・低脂肪を意識
フードは 体重・年齢・運動量 に合わせて調整しましょう。
良質なたんぱく質を確保
寒い季節は筋肉量を維持することが体温維持につながります。
筋肉の材料となるたんぱく質をしっかり摂ることが大切です。
おすすめ食材
- 鶏むね肉・ささみ
- 白身魚(タラ・鱈)
- ゆで卵
- 豆腐や納豆(少量)
手作り食を与える場合は、加熱し、塩分・油分を控えめに。
必須脂肪酸で皮膚と被毛を守る
乾燥シーズンには、皮膚のうるおいを保つオメガ3脂肪酸が重要です。
含まれる食材・油
- サーモン・イワシ・サバなどの青魚
- 亜麻仁油・えごま油
フードに数滴加えるだけでも保湿サポートになります。
ビタミンとミネラルの補給
冬の免疫力低下を防ぐために、抗酸化ビタミンを意識しましょう。
おすすめ栄養素
- ビタミンA:皮膚の修復を助ける(にんじん・かぼちゃ)
- ビタミンC・E:抗酸化作用で免疫力アップ(ブロッコリー・りんご)
- 亜鉛:皮膚の健康を守る(レバー・チーズ)
ただし、与えすぎは禁物。栄養補助食やふりかけで少し加える程度でOKです。
ごはんの温度も大事
寒い季節は、冷たいフードをそのまま与えると消化不良を起こすことがあります。
ポイント
- ぬるま湯(40℃前後)で温める
- 電子レンジはムラになりやすいので注意
- ごはん後にすぐ冷たい水を飲ませない
温かい食事は消化を助けるだけでなく、血流を促進し体温維持にも役立ちます。
秋冬の散歩と運動のコツ
寒い時期でも運動は欠かせません。
適度な散歩は筋肉を動かし、代謝と免疫力を維持します。
散歩の時間帯
最も冷え込む早朝や夜は避け、午前10時〜午後3時ごろの暖かい時間を選びましょう。
また、雨上がりや雪の日は滑りやすいため、肉球ケアをしっかり行ってから外出することが大切です。
防寒対策を忘れずに
洋服を着せる
短毛種や小型犬は、体温が奪われやすいため洋服が効果的です。
ただし、締めつけすぎると血流が悪くなるので、動きやすいサイズを選びましょう。
足裏のケア
冬の路面は冷たく乾燥しています。
散歩後は ぬるま湯で足を洗い・保湿クリームでケア を。
肉球がひび割れると、歩行時に痛みを感じることがあります。
運動不足解消の工夫
外に出にくい日は、室内でできる遊びを取り入れましょう。
おすすめ遊び
- 室内かけっこ(廊下などで軽く)
- おもちゃを使った引っ張り合い
- 知育トイで頭の運動
身体だけでなく、脳を刺激する遊びもストレス解消になります。
シニア犬の運動
年齢を重ねた犬も、動かないより「軽く動くこと」が健康維持に重要です。
短時間でも構いません。毎日外の空気を感じさせてあげましょう。
注意点
- 寒い日は散歩を短めに
- 無理をさせず疲れる前に帰宅
- 帰宅後は体を拭いてしっかり保温
秋冬の犬に必要なスキンケアと保湿ケア
乾燥が進む秋冬は、犬の皮膚トラブルが最も増える時期です。
フケ・かゆみ・赤みなどは「乾燥サイン」であり、早めのケアが大切です。
皮膚と被毛を守る基本ケア
ブラッシングを習慣にする
ブラッシングは、被毛の汚れや抜け毛を取るだけでなく、皮膚の血行を促すケアでもあります。
- 毎日1回を目安に、柔らかいブラシで優しく
- 静電気防止スプレーを軽く吹きかけてから行う
- 被毛の根元から毛先に向かって整える
皮膚を引っ張ったり、力を入れすぎると逆効果。
「マッサージするように」がポイントです。
シャンプーの頻度を見直す
冬は皮脂量が減るため、シャンプーのしすぎは乾燥の原因になります。
- 月1〜2回が目安(犬種・汚れ具合による)
- ぬるま湯(38℃前後)を使用
- 泡立ててからやさしく洗い、すすぎ残しを防ぐ
ドライヤーは冷風または弱温風で。
乾かしすぎると皮膚バリアが壊れるため、タオルドライを丁寧に行いましょう。
保湿スプレーやオイルでうるおい補給
犬用の保湿スプレーやオイルは、皮膚トラブルを防ぐ心強い味方です。
代表的な保湿成分
- セラミド:角層を守りバリア機能を補う
- コラーゲン:被毛にツヤを与える
- ホホバオイル:皮膚の柔軟性を保つ
- シアバター:乾燥から皮膚を保護
散歩後やブラッシング後に軽くスプレーするだけで十分です。
暖房による乾燥トラブル対策
暖房の使用時間が増えると、空気が乾燥し皮膚トラブルが悪化しやすくなります。
特にエアコンの風が直接当たる位置に犬がいると、皮膚が荒れやすくなります。
改善策
- ベッドやハウスを風の当たらない位置に移動
- 加湿器を併用して湿度50%前後をキープ
- 静電気防止グッズ(マット・ブラシ)を活用
秋冬に注意すべき病気と予防法
気温差・乾燥・運動不足が重なる秋冬は、いくつかの病気リスクが高まります。
ここでは代表的なトラブルと予防法を紹介します。
呼吸器トラブル
寒暖差で喉や気道が刺激を受けると、咳・くしゃみ・鼻水 が増えます。
特に短頭種(フレンチブルドッグ・シーズーなど)は注意が必要です。
予防法
- 室内の温度を一定に保つ
- 散歩は冷気が強い早朝・夜を避ける
- 加湿器で空気を乾燥させない
消化器トラブル
冷たい食事やストレスで胃腸が冷えると、下痢・嘔吐・食欲不振 が起きやすくなります。
予防法
- フードを人肌程度に温める
- ごはん後は安静にする
- 寒い場所で食事をさせない
関節炎・筋肉のこわばり
寒さで血流が悪くなり、シニア犬を中心に関節炎や腰痛が起こることがあります。
予防法
- 床にマットを敷いて冷えを防ぐ
- ソファや階段の上り下りに注意
- 体を冷やさないよう防寒着を使用
皮膚トラブル(乾燥・かゆみ・フケ)
秋冬は皮脂が減るため、皮膚バリアが弱くなりがちです。
乾燥によるかゆみやフケ、軽い炎症が増加します。
予防法
- シャンプー頻度を控えめに
- 保湿スプレーやオイルを使用
- 早めに獣医に相談
尿路結石・膀胱炎
寒さで水を飲む量が減ると、尿の濃度が高まり結石リスクが上がります。
予防法
- 水飲み場を増やす
- ウェットフードやスープで水分を補う
- 定期的に尿の色と回数をチェック
飼い主がチェックすべき秋冬のサイン
犬は体調不良を言葉で伝えられないため、小さな変化を見逃さない観察力が健康維持のカギになります。
食欲・水分摂取の変化
- ごはんを残す
- 水を飲む量が極端に減る
- 食後に吐く
こうした変化が続くときは、体調のサインであることが多いです。
便や尿の異変
便が硬すぎる・柔らかすぎる、色が黒っぽい場合は注意。
尿の回数が減る、濁る、血が混じる場合も早めに受診を。
皮膚や被毛の状態
- フケが多い
- 赤みや湿疹がある
- 毛がゴワついてツヤがない
ブラッシング中に確認することで、早期発見につながります。
行動・表情の変化
- 動きが鈍い
- 触られるのを嫌がる
- 震えている
- 寝る時間が極端に増える
これらは痛みや寒さ、ストレスのサインです。
いつもと違う様子を感じたら、すぐに体を温めて安静にし、必要に応じて獣医師に相談しましょう。
愛犬を守る生活リズムの整え方
犬は規則的な生活を好む動物です。
季節の変化に合わせて、日々のリズムを安定させることで免疫力も高まります。
朝の過ごし方
- カーテンを開けて朝日を浴びさせる
- 軽いストレッチや遊びで体を温める
- 水と少量の食事で代謝をスタート
日光は体内時計を整え、ホルモンバランスの安定にも役立ちます。
昼の過ごし方
日中は室内が暖かくなりやすいため、こまめに換気を。
適度に日光を取り入れると、ビタミンD生成を助けます。
夜の過ごし方
- 寝床は冷気の通り道を避ける
- 寝る1時間前に室温を調整
- 照明を落としてリラックスできる空間に
就寝中の急激な温度低下を防ぐため、ペットヒーターや毛布を上手に使いましょう。
飼い主ができる心のケア
秋冬は人も犬も活動量が減り、気分が沈みやすい季節です。
犬は飼い主の感情に敏感なため、ストレスを感じ取ってしまうこともあります。
- 穏やかな声で話しかける
- 一緒に過ごす時間を増やす
- スキンシップを欠かさない
温かいスキンシップは、犬に安心感を与えるだけでなく、飼い主にとっても癒しの時間になります。
まとめ
秋から冬にかけては、犬にとって体調を崩しやすい季節です。
しかし、飼い主が少し意識を変えるだけで、愛犬は寒さにも乾燥にも負けず、元気に過ごすことができます。
今回のポイントをおさらいすると
- 朝晩の冷え込みや乾燥が犬の体に負担をかける
- 室温20〜23℃・湿度40〜60%をキープ
- 水分補給を意識して脱水を防ぐ
- 食事は温かく、バランスを重視
- 散歩は日中の暖かい時間帯に
- 保湿ケアとブラッシングで皮膚を守る
- 体調の小さな変化を早めにキャッチする
犬にとって飼い主は「いちばんの安心」です。
毎日の暮らしの中で、優しく声をかけ、手をかけてあげることこそが、何よりの健康管理につながります。
季節の移り変わりを一緒に感じながら、この冬も、愛犬とぬくもりのある時間を過ごしてください。


